~第13話~いざアーグラへ後編

俺達は例のごとく何人ものインド人の「フレンドリーの押し売り」を掻い潜りメインバザールを抜けニューデリー駅に向かった。

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駅は人でごった返していた。

インドでは「石を投げればインド人に当たる」と言われてるくらいインド人が多いという当たり前の出来事が今日も目の前で起こっているのだ。

もし試しに石でも投げてみれば、この光景からしてその石はきっと地面にたどり着くことはないだろう(泣)

俺達は「2等寝台」という若干VIPなチケットをゲットしていたが、これが「2等自由席」になると乗車率は400%と言われている。

途中知り合った旅人の話では2等自由席でイスなど空いてるわけもなく、さらに立つスペースすらなく、結局知らないインド人のおじさんの上に座ったと言っていた・・・

どうすんだ!

さっきまでなかった感触をお尻に感じたら!!

「あのぉ・・・携帯当たってますよ?」とでも言えばいいのだろうか!

話が脱線したが、脱線するのは話だけにして欲しい。

そう思いながら俺達は鉄道に乗り込むことに成功した。

2等寝台は向かい合う形で4人座れるようになっていてその上にベッドらしきものがついていると言うなんとも画期的なものだった。

そして車内の汚さもそれはそれは画期的なものだった。

まずドアが手動で開きっぱなし。

言っておくが窓ではない、ドアだ。

そして何よりトイレがすごい。

むしろトイレと呼ぶのすら恐れ多い。

もしあれをトイレと呼んだなら今すぐ俺はTOTOに訴えられてしまうんじゃないかと思うとあれはトイレではなく、トイレ風「穴」と呼ばせてもらおう。

4人席には俺達二人と韓国から来た親子が座った。

お母さんと息子で来ていたが、息子は一言も口を聞いてくれなかった。

お母さんの話によると彼は引きこもりでどうしようもないからインドに連れて来たということだったが、もし俺が彼だったらこれを機に就職を考えるだろう。

お母さん!どうしてインドなんだよ!

今すぐ働くから帰ろうよ!!

・・・子供はいつもお母さんの思う壺である。

隣の席に座っていたインド人の女の子はお父さんと乗っていて、駅を出るときにお母さんに見送られ泣いていた。

きっとどこか遠い太平洋の裕福な島国に売り飛ばされてしまうんだろうと勝手な想像をした俺は頭の中で「ドナドナ」を歌いながら涙を堪えていた。

すると彼女はおもむろにポケットから携帯電話を出し笑顔で話し始めた。

なんだよ!

売る側かよ!!

じゃなくて・・・

 

金持ちかよ!!と心の中で突っ込んだ。

インドの貧富の差を改めて実感し、この国に真の平和が訪れるのはいつなんだろうと携帯で話す彼女を見ていたが、彼女のあまりの可愛さでインドの平和のことはどうでもよくなった。

そしてやはり外人である俺は目立つのだろうか、彼女はこっちを見て笑っている。

きっとはじめて見るイケメンな日本人の男にくぎ付けだったのだろう。

その笑顔は女の子が恋をした時の笑顔ではなく、人を馬鹿にしたときの笑顔だったのは言うまでもない(泣)

横からお父さんの物凄い熱い警戒の眼差しをものともせず英語の話せる彼女に俺は思い切って話しかけたのだ。

「さっきまで泣いてたのに~」

と好きな子に話しかける、言葉の選択を間違えた小学生の様に茶化してやった。

なんなく打ち解けて気づけばお父さんも笑っていた。

実は俺ミュージシャンなんだよって話をしたら彼女が目をハートの形にして「歌って!」って言うではないか。

もちろん俺はインドの鉄道でインド人数十人に見守られる中大声で歌った。

感動したのは歌い終わると同時にみんなが大きな拍手で迎えてくれたのだ。

まさか「チューリップの花」で拍手が起きるとは思いもしなかったが笑

ニューデリーからアーグラまでは2駅、途中の駅で停車するとホームには物乞いの子供達がいた。

彼らは旅行者を見つけると世界の車窓から手を出してお金をねだる。

俺はさっきからインド人と溶け込んでいるため気づかれないだろうと思っていたが、あっけなく見つかった(泣)

一生懸命な彼らの姿を見るとなんだか泣けてくる気持ちもあり、かといってその都度みんなにお金をあげてたら帰る頃には俺がそっち側にいることになる(泣)

だから俺は残っていたキャラメルをポーチから出してその汚れた小さな手の上に乗せた。

その子はすぐに袋を開けてキャラメルを小さな口いっぱいに頬張る。

さっきまでの顔が嘘だったかのように(たぶん嘘だが)急に笑顔になる。

そしてまた手を出す(号泣)

運転手さん早く出発して~(泣)

アーグラまでの3時間、俺は少しだけ深くインドを知れたような気がした。

~第12話~いざアーグラへ!さらばデリー

朝8時に起きて俺達はラブホテル風ホテルを出てリクシャーを拾った。

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「おはよう!メインバザールまで行ってちょうだい!」

「はいよ~任せときっ!!」

インドに来てからあちこちふらついたため、いつの間にかこの辺の地理に詳しくなった俺達を乗せたリクシャーは潔く駅と反対方向に進みだした。

「こらこら!そっちじゃねぇだろ!!」

「ノープロブレム!」

「いやいや、朝からコントやってる暇はないんだよ!駅に行ってってば!」

「ノープロブレム!」

相変わらず物凄いスピードでクラクションを鳴らしながらリクシャーを走らせ、突然小道に入るおじさん。

「清水君・・・やばくない?絶対方向違うって・・・」

だ、だよな・・・

「なぁ!おじさん!止め・・・

キキーッ!!

「よし、ちょっと待っててくれ!」

恐怖におびえる日本男児二人を愛車に残したままおじさんは友達と世間話を始めた。

「お待たせ~さぁ行こうか!」

なんでや!!

なんでお前の用事につき合わされなきゃいけないんや!!

そしてまたリクシャーを飛ばすこと5分・・・。

「着いたぜ!」

清水君・・・ここ駅じゃないよね。絶対違うよね!!

うん、来たことないし見たことない・・・

「違う!メインバザールに行きたいんだ!」

安藤が鼻の穴を広げて一生懸命説明しているのを聞きながら俺は一生懸命英語の勉強をしていた。

「だから着いたってば!」

「違う!ここじゃないの!!メインバザールに行きたいの!」

「しつこいな!そこだってば!」

「安藤!もういいよめんどくさい。おじさんじゃあね!ありがと!」

「清水君、ここやっぱ違うよ!」

安藤はどうも腑に落ちないらしい。

近くにいたインド人に尋ねるとすぐ近くに見える線路の向こう側を指差した。

逆口かいっ!!

川口駅で例えるとここは東口かいっ!!

なるほど、どおりでさびれてるわけだ。

いや、納得してる場合じゃない。

なぜインド人は頼んだ場所に連れて行ってくれないんだ!

日本で「すいませんセンター街までお願いします」って言って渋谷の南口の松屋の前かなんかで降ろされたら怒るでほんま。

結局逆口まで歩いたら5分以上かかったじゃないか!

いちいち怒っていたら埒が明かないことは2日目くらいで気づいてはいたが、ことあるごとにお国柄の違いに腹が立ってしまうものである。

「清水君!アーグラ行く前にあそこのチャイ飲もうよ!」

「お、いいねぇ~」

「あのおじさん好きなんだよね~」

「確かに、あの人だけなんかまともだもんな(笑)」

駅からメインバザールに入り行き着けのチャイ屋へ向かった。

もちろんチャイ屋に着く頃には知らないインド人も加わって3人で歩いていた。

「ナマステ~」

「ナマステ~」

さすがに常連(3回目)だけあっておじさんも俺達のことを覚えていてくれたみたいだ。

「チャイふたつちょうだい!」

「はいよ~」

確か一個5ルピーだったよな・・・

「はい10ルピー!」

「ありがとうね~じゃあおつりの2ルピーね!」

一個4ルピーだったんかい!!

「おじさんこないだ5ルピーって言ってたじゃん!!」

「ははは・・・」

笑ってごまかすな!!

「まぁその、あれだ。時々値段が変わるんだよ」

「そっか~なるほどね!株価と一緒だねってバカ!!」

インド人はどうしてこうも適当なんだろう。

日本ではよく適当だなぁ!と言われる俺ですらこの適当さにびっくりさせられるのである。

実は世界的に見れば俺は適当な男じゃないんだなと実感した。

適当なのは女の子の扱いだけである(泣)

だいたいインドに来てからレストラン以外の店で値札を見たことがない。

全て時価ですかそうですか。

この際俺もインドにいるうちくらいはいつもの10割り増しくらい適当に生きてやろうと決めたのだった。

~第11話~天国と地獄

インドで初めて触れ合った日本語(安藤以外の)に感動したのもつかの間彼女達はそそくさとどこかへ消えていった・・・。

安藤が書類を書き終え、俺達はチケットを獲得したのだ。

明日俺達はニューデリーを出てアーグラへ行く予定。

腹が減ったので駅を出てメインバザールに戻り、レストランチックなものを探した。

ここで見つけた屋上のカフェは最高だった。

あくまでも今の俺たちにとってはである。

町のやかましいクラクション、人込み、野良犬、ノラ牛・・・

静かな屋上から見下ろすインドは俺の凍てついた心を一瞬にして溶かしてくれたのだ。

インドに来る前には

「途上国に行って肌で感じたいんだよ!先進国にいたってわからないんだよ!」

などと冒険家のようなことを言っていた俺だが、やはり途上国はコタツに入ってみかんを食べながらテレビで見るのが一番いいということに気づいた。

神様がいるのならこんな風に下界を見下ろしているんだろうか。

屋上のカフェで周りを見渡すとやはりそこには「欧米か!!」と、思わず突っ込みを入れたくなるような人たちがたくさんいた。

実際一人一人頭を叩きながら「欧米かっ!」と突っ込んで回ったら、出国前に書いて机の中に閉まっておいた遺書が役に立ってしまうのでやめておいた。

おそらく彼らもバックパッカーだと思うが、何故かかっこよく見えてしまうのだ。

飯はそこそこ高くそこそこまずかった

俺達は泣く泣く店を後にしてまたバザールに戻った。

 

うるせぇ!!

しかしうるせぇ!!

どこから湧き出てくるんだお前らは。

「はぁい!どこから来た?」

「見りゃわかんだろ!フランスだよ!!」

「ほっほっほ~!」

「どっか行けって・・・」

「俺、いいお土産屋さん知ってる!着いて来い!」

「いいってば・・・」

「これからどこ行く!?」

「明日アーグラ行くよ・・・」

「そっか!まぁとりあえず付いてきなよ!」

少しづつ覚え始めた英語が楽しいがためになんだかんだこいつといろいろ話しながら歩いていたら見たことある場所にたどり着いた・・・

 

「ここ俺の友達の旅行会社だから安心して!」

「・・・あのなぁ。昨日来たわ!!ボケ!死ね!」

気付けばいつもの旅行代理店の前に立っていた。

立ち止まってあーでもないこーでもないと話しているとインド人が集まってきてあっという間に囲まれた

なんだお前ら!?
また俺を騙す気か!?
あっちいけ!
しっしっ!!

するとその中の一人がおもむろに自分の股間を指差してこう言った。

「オイ日本人!俺のチ〇コはでかいぜ!」

なぜかインド人たちのチ〇コ自慢大会が始まった。

羽賀なんとかさんには負けるが、俺にだって詐欺師日本代表としてのプライドがある!!

ほぉ・・・

「見せてみんかい!!こらぁ!!」

インド人を無理やり脱がそうとする俺。

さっきまで自慢していたチ〇コを必死で守ろうとするインド人。

へっ!

口ほどにもない!

どうだ!

俺のを見せてやろうか!!

 

やめろ!!

出すな!!

結局インド人5,6人に押さえつけられ日本から持ってきた自慢の土産は見せてやることができなかった。

変わりに日本から持ってきた飴玉をやったらさっきまで5、6人だったインド人が10人くらいに増えた。

今時、働き蟻でもそんなに増えないぞ。

そんなこんなでインド人のチ〇コ自慢に嫌気が差して、歩き出した俺たち。

すぐさままた新しい一人のインド人がついて来る。

相変わらず馴れ馴れしく話しかけてくる。

もういちいち書かなくても分かるだろう・・・

どこ行く?
俺は日本人の彼女がいる。
来年日本に行く。

だなんだとしつこく話しかけてくる。

「いい所に連れてってやる」

って言うからつついていったら、なんだか豪華な土産物屋ではないか。

ちなみに言っておくが、この俺に学習能力というものはない(泣)

とりあえず中に入って物色したが・・・

たけぇ!!

めちゃくちゃたけぇ!!

日本で買えるわ。

ざけんな。

店を出てみるとそいつが待っていた。

そしてなにやら店員らしき人と仲良く話していた。

俺はふと気になって、彼に聞いてみた。

「お前いくらもらえんだ?」

「・・・ははは。・・・10Rsです」

正直な奴だ・・・。

「お前正直でいいやつだなぁ!」

「デショ!?次の店案内するよ!」

「ふざけんな!!ばか!」

インドでは土産物屋、ホテル、旅行会社、案内すれば騙された観光客が買おうが買うまいが、連れて行ったやつが店から金がもらえるシステムになってるらしい。
これはある意味画期的なシステムだ。

誰もがその会社の営業マンになれる仕組み、給料は完全歩合制だがどこかの国の派遣村でやいのやいの騒いでるよりはよっぽどマシだろう。

彼らが日本人や観光客を見つけては馴れ馴れしく話しかけ、どこかへ連れて行き金をもらうという、素晴らしいクソシステムのおかげで旅行者達はいちいち腹の立つ毎日を過ごさなくてはならないのだ。

まったくよ~・・・

あれ!?

安藤先生!?

なんか顔色悪くない!?

「清水君・・・俺、疲れた。帰ろうよ・・・」

そういやそうだな!

そうしているうちにも横にいるインド人は一生懸命俺たちに話している。

「ねぇねぇ!マリファナもあるからさ!」

うるさーーーーーーい!!!

~第10話~インドの不思議

ところでみなさんお気づきでしょうか?

この画像を見て気になるところはないでしょうか?

牛の角を見てもらいたい。

左の牛君は短くてなんだか可哀相な「短小包茎君」であります。
(おそらく童貞)

問題は右の牛だ!

よく見ると角が自分の頬に向かって生えてるではないか!!

牛の角がどのくらいのペースで生えるのかは俺にはよくわからないので、田中義剛にでも聞いてくれればいいと思うが、このままの勢いで行くと多分来年辺りには自分の角が自分の頬を突き破っているのではないだろうか。

謎は深まるばかりである。

これもインドの7不思議のひとつに伝道入りしておこう。

そんな彼「自爆君」は自分の角で死ぬなんて夢にも思っていないだろう。

とりあえず「短小包茎君」と「自爆君」はこれからも仲良くやっていけばいいと思う!

勝手にしてくれ!

薄汚い道端で洒落たティータイムを終えた俺達はメインバザールを歩き回ることにした。

直線約2kmほどのバザールにはいろんな店が立ち並んでいた。

洋服屋、シルク屋、お香屋、レストラン、宝石屋・・・etc

もちろんお客さんのほとんどは・・・

牛だ・・・。

 

肌の色、服装、どこから見ても日本人、もしくは韓国人、もしくは中国人、もしくはイタリア人の俺たち。

10m置きにうさんくさいインド人に声をかけられるのである。

夕方の新宿歌舞伎町を歩く綺麗なお姉さんの気持ちがなんとなく分かった気がする。

安藤先生は基本的に話しかけてくる彼らを無視する。

さすが先生である。

俺はと言うと・・・

とにかく話したがりである。

英語で会話なんて、まるで自分がインテリになった気分でなんとも言えない鼻高々な気分を味わえるのだ。

まぁインドへ来てから学んだ英語で会話が成り立つわけもないんだが。

とにかく話せない英語で、明らかに俺たちを騙そうとしてるインド人と会話する俺。

「へい!どこから来た?」

「日本だよ」

「どこ行くんだ?」

「ただブラブラしてるだけだって」

「なんで!?」

「いや・・・なんでって言われても・・・」

「僕いいお店知ってるから行こうよ!」

「いいってば。ただブラブラしてんだから」

「なんで!?」

「だからなんでって聞くな!!答えられないだろうが!!」

 

「なんで!?」

 

「ばいばい!」

最終的には俺が英語を話せないため、お詫びといっちゃなんだが逆ギレをプレゼントしてお別れをするのである。

今思えば全く英語の話せない俺がインドで少し話せるようになったのは、インド人のなれなれしさのおかげかもしれない。

絶対に感謝はしないが。

何人ものインド人を掻い潜り俺達は明日向かう「アーグラ」行きの鉄道のチケットを買うために駅へ向かった。

事前に調べた「インドの鉄道」とはこういったものだ。

 

1:チケットを買おうと、2階にある「外国人専用窓口」に向かうと、どこからともなく現れるインド人に「今日は休みだ」と言われ足止めをくらい、いつもの旅行会社へ連れて行かれる。

2:インドの鉄道は時間通りに来ないことのほうが多い、12時間待ったあげくキャンセルになったりする場合もある。2時間3時間待つのは日常茶飯事。

3:寝台列車は寝ている間に物を盗まれる。ひどい時は着けている指輪を盗まれることもある。

4:2等自由席は乗車率400%

などなど・・・。

いい噂など全くない!!

かと言ってインドに来た以上俺達はいつまでもデリーにいるわけにはいかないのだ。

メインバザールを逆戻り、出るとすぐそこには「ニューデリー駅」がある。

駅の2階にある噂の「外国人専用窓口」に向かった。

(さぁ、どっからでも来やがれ!俺は騙されないぞ!!)

気合い十分俺達は駅に突入。

(よく考えたら鉄道のチケットを買うだけなのに気合いが必要なのかはインドの7不思議のひとつである・・・)

物凄い人ごみをすり抜けるように歩く。

インド人と目が合う。

(よし来い!!お前か!!お前が俺を騙そうとしてるのか!!?)

・・・違ったようだ。

看板どおりに階段を上る。

上から降りてくるインド人と目が合う。

(来たな!!「今日は窓口休みだ!」とか言いながら俺たちをいつもの旅行会社に連れて行くつもりだな!!?)

・・・違ったようだ。

「外国人専用窓口」に入る。

あれ??

着いちゃったよ!

すんなり着いちゃったよ!

さっきまでの気合を返せバカタレ!!

広いロビーに長いソファーがあり、そこに明らかインド人ではないだろう素敵なオーラを放つ外国人がたくさん座っていた。

彼らはどう見ても騙す側ではなく騙される側の人間だろう。

俺達はまず電車の時間を調べ申請書らしき書類に必要事項を書く。

もちろん全部英語だ・・・。

「安藤!!頼んだ!!わからない単語一個一個辞書引いてたら俺ここで干からびて死んでしまうわ!」

「OK!マカセトイテ!」

 

そう言いながら一生懸命辞書を引く安藤先生には頭が上がりません。

実際書類関係の英語は専門用語が多いから聞いたことない英語がいっぱいでしたね。

「FUCK」もなければ「BITCH」もない。 

周りを見ると日本人なんだか韓国人なんだか分からない奴が多すぎて下手に話しかけられない空気をかもしだしているではないか・・・。

そんな中突然聞き覚えのあるなんとも懐かしい言葉が!!

俺はインドに来て人生初の逆ナンをされたのだった。

「あの~、鉄道のタイムテーブルってどこに売ってるか知ってますか?」

うわぁぁ~!!

久々に聞いた日本語!!(しかも女性バージョンというおまけ付)

これは逆ナン以外のなにものでもない!!

きっとこの人もインドのやかましさに疲れ俺に癒しを求めてきたんだろう。

日本では癒し系ならぬイヤラシイ系で有名な俺に声をかけるとはお目が高い!!

いやぁモテる男はつらい!!

「あ、1階の窓口に売ってましたよ!」

「あ、そうですか、ありがとうございます!」

「どっから来たんですか?」

「大阪と名古屋です!女二人寂しく・・・はい笑」

「へぇ~すごいっすね!女二人じゃ寂しいですね~!じゃあ立ち話もなんな・・・

「じゃあまた!!」

「ちょ・・・ちょっ!!」

・・・・・・。

 

「安藤!!てめぇいつまで辞書引いてんだこらぁぁぁぁ!!」

「え?」

むかつく。

~第9話~たらい回し

朝8時ごろ目が覚めた。

・・・暗い!!

なんでこんなに暗いのよ!?

そう。

窓がない。

今思ったらこのホテル窓がない。

わかりやすく言うとラブホである。

もしかしたら知らないうちに俺らラブホに泊まってたのかも知れない。

なるほど!

だからみんななかなか連れてきてくれなかったんだ!

んなわけねーだろ。

なんだか朝なのに朝じゃない、インドなのにインドじゃない・・・

好きだけど言えない!!

そんな複雑な気持ちで迎えた朝は清々しいものだった。

俺たち二人はさっそく町へ繰り出すことにした。

この間いろんな奴に「危ないから行くな」と言われたバザールへ行くことにした。

その名も「パハールガンジー」メインバザールだ。

なぜ行くなと言われたところに行こうと思ったかって?

だってどうせ嘘だもん!!

 

ふむふむ。

確かに人がわんさか賑わっているではないか。

うさんくさいインド人、ターバンインド人、サリーを着た美人インド人、観光客らしき欧米人、野良犬、物乞い、牛・・・

牛!?

まさか~。

牛が町中に、ましてや一番賑やかな日本で言ったら渋谷原宿みたいなところに牛がいるわけ・・・

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あぶねぇって!!

 

つーか、近いって!!

 

なんちゅうとこに来ちまったんだと後悔する暇もなく、次から次へとうさんくさいインド人に絡まれる。

「コンニチハ~アニョハセヨ~」

日本人か韓国人かわからねぇなら話しかけんなボケ!!

「ホテル?レストラン?マリファナ?」

いや・・・マリファナ関係ねぇだろ・・・。

とにかくどいつもこいつもインディアン。

でもこの人たちの場合インディアン(嘘つき)

この町を何かに例えるなら「ちゃんこ鍋」だ。

相撲取りが結局強くなれずに引退後、生活のために必死で悩んだ挙句、なんとなく開いたちゃんこ屋の「ちゃんこ鍋」だ。

とにかく何もかもがゴッチャゴチャ・・・

ひとつの世界にたくさんの世界が共存しているように思えた。

まず「歩き方」で調べたインターネットCAFEらしき所に行ってみた。

今流行のネカフェである。

きっとネカフェ難民達がネットに明け暮れているに違いない!

おらワクワクしてきたぞ!

 

メインの通りを一本横に入る。

軽自動車一台が山瀬まみの顔真似をしたらやっと通れるような細い道だ。

「お!あったぞ安藤!」

うん。

間違いなく「CAFE」ではない!!

なぜならウナギの寝床にパソコンを並べただけの店だからだ。

横一列に10人くらいが座ってパソコンをいじってる姿は世界一を誇る「IT大国インド」とは思えない。

ショックだ!

合コンでキムタク似の友達呼んだよ!って言われて俺が来た時の気持ちになってほしい。

 

それと同じだ。やかましいわ。

店主は「店主」と言うよりも「パソコンいっぱい持ってる近所の兄ちゃん」でしかない。

よくよく考えてみたらネカフェ難民なんているわけがない。

ここに入れる時点でインドでは難民ではなくまぁまぁ金持ちだ。

とりあえず自分のホームページを更新したりして過ごした。

店の横にはおっさんが「チャイ」を売っていた。

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「チャイ」とは甘ったるいミルクティーのことで、インド人はこの「チャイ」を朝昼晩としょっちゅう飲んでいる。

いろんなところでチャイを売っているが店によって味も作り方も全然違うらしい。

一杯5Rsだと言う。

俺達は10RS払い二人で洒落たティータイムを取ることにした。

うまい!!

これはうまい!!

二人で喜んだ。

「おいし・・

ドンっ!!

いてッ!!

誰だよ全く・・・

後ろから右腕に重たい感触と痛みと怒りと部屋とワイシャツと私がこみ上げてきた。

ったくもう!!

俺は振り返った。

 

 

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お前かよ!!

どうりで痛いわけだよ!!

 

いや・・・そんなことより安藤さん。

さっきからずーっと俺の前で悲しそうな目で何かを訴えてる子供がいるんですけど・・・

少女はやはり泣きそうな顔をしてる(絶対演技!)

俺もやはり泣きそうな顔をしてる(素で)

でも、この子すんげぇ可愛い・・・

付き合いたい!

たぶん5歳くらいだろうから付き合うとかまだ早いかもしれないけど、手とか繋いでパキスタンとの紛争地帯を駆け抜けたい!!

と、純真無垢でピュアな妄想を膨らましながら持っていたキャラメルを上げたら、さっきまでの顔はなんだったんだっつーの!くらいの笑顔で走り去って行った。

・・・。

でたー!!

増えてる!!

安藤!!

さっきより増えてる!!

ピクミンかお前らは!

つーか走り去って行ったのかと思ったら、友達呼びに行っただけかよ!!

もう一人のチビにもキャラメルをあげ、インド旅行費用5万円の私はキャラメルで許してもらいましたとさ。

それにしてもインドの子供可愛い・・・

付き合いたい。

~第8話~風船売りの少女

野良犬にビビリまくるアホな日本人二人組み(清水君と安藤先生)

俺たちは知らないうちに夜のバザールに紛れ込んでいた。

インドの夜のバザールは、中学生の時ディッキーズのチノパンを買いに行った上野を思い出させた。

時代は「腰パン」だ。

とりあえず俺達はバザールを抜け、さらに汚らしい路地裏を抜け、にぎやかな街に出た。

ここはデリーでも一番栄えてる(らしい)場所「コンノートプレイス」

一帯が円状になっていてそこにいろんな店が並ぶ。

その中には見慣れた「M」の文字や「KFC」の文字も並ぶ。

もちろんこの時間には開いてなかったが・・・

腹が減った俺達は飯屋を探した。

道端で「歩き方」を広げるとうさんくさいインド人が寄ってきて話が長くなる。

「歩き方」を読んでると「歩けない」現象が起こるのである。

インドで立ち止まり「地球の歩き方」を読むという行為はゲイの集会で服を脱ぐのと同じことである。

めんどくさいからひと通り無視。

だがその中にチベット人だという他のインド人と比べるとうさんくささが少しだけ小さめのおっさんがいて、その人に店を案内してもらった。

着いて来い!

と俺たちの前を歩くおっさん。

「ねぇ清水君・・・大丈夫かなぁ・・・」

小声で安藤先生が聞いてくる。

「てか別に小声じゃなくてもこのおっさん日本語わからないから普通に話せよ!」

「ねぇ!なんかずいぶん遠いんじゃない!?」

だんだん安藤先生の焦りが出てきた頃、ちゃんと店まで到着。

しかしすんげぇ高そうな店だ。

中に入ると高そうな人種の人たちがナプキンで口を拭いてたかどうかはぶっちゃけ覚えてないがそんな感じだ。

メニューが生意気にも英語で書いてあるためさりげなく安藤の注文に便乗。

当たり障りなさそうなカレーを食べた。

二人で750Rs(約¥1800)

 

たけぇぇ!!!

インド滞在45日で5万しか持ってないアホな日本人には致命的な金額である。

 

安藤先生が気前よくおごってくれた。

帰り道、突然箸を持つほうが右だか左だか忘れちまった二人はとりあえず迷子になった。

あぁでもないこうでもないと言いながら夜のインドを練り歩いた。

というか、気づいたら練り歩くはめになってた(怖)

 

まだ5歳くらいだろうか

俺たちに近寄ってきた風船売りの少女は、ボロ雑巾みたいな洋服を着て、裸足で歩いていた。

身振り手振りで俺たちに風船を買ってくれとアピールしてくる。

英語どころか公用語であるヒンドゥー語ですら彼女達は教わってないのである。

悲しそうな顔をする少女。

きっと演技だろう・・・大根役者ッぷりが劇団ひまわりの俺にはばればれであった。

そして彼女にも俺が元劇団ひまわりではないことはバレバレだったことだろう。

わかった!買えばいいんでしょ!買うよ!そんな目で俺を見ないでよ!

心優しい劇団四季の俺は5Rsを手渡した。

首を振る少女

え?

両手の指をこれでもかってくらい全開にして俺に突き出す。

10ルピーだといわんばかりに。

「っざけんなよ!まけろよ!今時ヤマダ電機だってそんくらいまけるぞ!?」

とは言えなかったので、

5Rsあげてバイバイした。

じゃあな!

5分後・・・

 

 

なんでまだいるんだよ!!!

「だからなんだっての!?5Rsあげたんだから許してくださいよ!もう!(泣)」

今にも泣きそうな顔で10Rsをアピールしてくる。

はっきり言って俺が泣きたい。

このままだと日本まで着いて来て5分おきに5ルピーづつ渡す羽目になりそうだ・・・

確かに日本人の俺が10Rs(25円)あげるのは簡単だけど、どこか腑に落ちない。

だって今にも泣きそうなのは他の誰でもなく滞在費5万のアホな日本人の俺なのだ泣

だがしかし!

俺たちはこんなときのために秘策を練っていたのだ。

鶴の折り紙

日本の伝統とも言えるこいつを見ればきっと感動して走って帰るに違いない。

もしかするとうれしすぎてうれションするかもしれねー

俺が折り紙を手渡すと少女は不思議そうにそれを眺め、急に笑顔になった。

近くにいた弟らしき子供にもそれをあげたら二人して笑顔になって走ってどこかへ消えていった。

俺は彼らの後姿に向かって叫んだ

You can fly!!

そういえば彼らは英語がわからないんだった。

うす汚いホテルに帰り俺達はダブルベッドに横になった。

なんとうす汚い光景だろう。

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それにしてもインド・・・何もかもが刺激的だ。

あ、あと43日いなきゃいけないんだった。

実に憂鬱である・・・。

 

~第7話~ホテルに泊まろう

インド人を散々わめき散らかした俺。

彼はこう言った。

「まぁまぁ落ち着けよ、フレンド。」

お前はいつから俺のフレンドになったんだ!!

しかもそのフレンドを怒らせてるのは紛れもなくお前だ!

なんだかんだ言い合ってるうちに俺達はこいつのリクシャーに乗っていた。

ザ・インドマジック!!

いや、なんだかんだ悪そうな奴じゃないしさ。

面白い奴だし、俺たちでホテル決めて、そこに連れてってもらえばいいじゃん?

てことになったわけ。

そして俺達はそいつについて行きリクシャーに乗った。

(実際運転するのはそいつのおじさんで、そいつはタダの営業マン)

「安藤!とりあえずどこでもいいからホテル決めちゃおう!」

「そうだね!」

「おし!ジャンパトゲストハウス分かるか!?」

運転手「イェス!!もちろん分かります!」

「じゃあそこ行って!」

「はい!」

リクシャーは走る。

無意味にクラクションを鳴らしながら。

どいつもこいつも走り方は同じのようだ。

運転手「はい着きましたよ!」

はぁ・・・。

やっと休めるよ・・・。

って馬鹿!!

俺たちの目の前には「DTTDC」の文字が・・・。

「ここがジャンパトゲストハウスだってか!?あぁ゛!?」

運転手「いや、ここ私の友達のとこだから心配しないで」

そういう問題じゃないわボケ!!

「もういい!!金なんか払わないぞボケ!!」

運転手「分かりました!!ちゃんとジャンパトゲストハウス連れてけばいいんでしょ連れてけば!」

な・ん・で・・・逆切れなんだよ!!

ふざけるんじゃないよまったく。

俺達は店から出てきたそいつの友達と名乗るうさんくさいインド人を押しのけてリクシャーに乗った。

運転手「・・・で、ジャンパトゲストハウスってどこにあるんですか?」

 

てんめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

もういいわかった!

とりあえずここまで行けと地図を開いて見せた。

着いたところは小さいバザール。

運転手は俺たちに向かってなにやら言っているがほとんど無視して金だけ払いリクシャーを降りた。

ここがジャンパトゲストハウスの近くだと言うことは確かだったが、なんせ人に聞いても当てにならん。

てか聞けば聞くほど目的地から遠ざかりそうな気がするんだ。

とりあえずキョロキョロしてたらおっさんが近寄ってきてあそこだと指を刺して教えてくれた。

ものすごい親切な人だと感動したが、よく考えてみたら普通のことだ。

うさんくさい入り口にはうさんくさい門番のおっさんがいた。

そして俺たちはうさんくさい建物のうさんくさい階段を登った。

英語の達者な安藤先生(いやもうあの事件以来安藤は「安藤先生」ではない、ただの安藤である)がペラペラ話してくれてなんとかチェックイン。

二人で400Rsだった。

はっきり言って高い!!

日本円にしたら約1000円だ。

二泊すれば大阪の早朝ピンサロに行ける!

まぁこの際いいだろう。

(ただの)安藤がいるうちは少し贅沢しよう。

ドラクエⅢに出てくるような鍵を渡され部屋に案内された。

思ったよりキレイだ。

ベッドがあるじゃないか!!

トイレはと言えば・・・

まぁ説明しようがない。

というか、説明したところでこれを読んでる人たちは説明されたことを後悔するであろうトイレであった。

聞いてはいたが、トイレットペーパーなどというぜいたく品はない。

知ってる人も多いと思うが、インド人は基本的に左手で尻を拭くのだ。

拭くというよりは水をかけて洗うと言ったほうが正しいのかもしれない。

まぁインド人がウンコしてるところを見たわけでもなく、見たいとも思わないから詳しい情報は手に入らなかった。

そんでもって右手で食事をするのだ。

なぜかと言うと、うんこしたあと尻を左手で拭きながら、うんこを右手で食べれるようにだ。

たぶん。

左利きの奴にはつらい話だとは思うが、実に無駄のない文化だと思う。

だってうんこを拭きながらうんこを食べれるんだから画期的な発想だ。

食事中の皆様、本当にありがとうございました!

左手は「不浄の手」とされ、握手や物の受け渡しには基本的に右手が使われる。

でも実際つり銭とか渡される時左手を使ってる人も多かったな。

俺だからか!!

俺がウンコみたいだからか!!

でもってシャワーは基本的に「水」-

安宿はお湯は出ないところが多い。

出ても時間帯が決まってたり、5分くらいしか出なかったりだ。

ここは少し高いせいか、お湯が出た。

もちろん5分だけ。

とにかく疲れた俺達は気付けば爆睡していた。

夜の7時頃目が覚めた。

腹が減ったのでルームサービスのカレーを頼んだ。

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早速右手を使って食べてみたが、なんとも食いづらいではないか。

てか指がふやけて大変なことになった。

気分が悪い。

しかも手を洗わないまま食べ始めた俺は、もちろん安藤に怒られた。

安藤は潔癖症なのかなんなのか知らないが俺はよく怒られる。

「清水君汚いよ!!」

 

このセリフ何百回言われたことか。

ただの安藤のくせに!!

俺はその後左手でけつも拭いてみたが、安藤には内緒だ。

そんなこと言ったら絶対に怒られる。

むしろ部屋を別にされそうだ。

カレーはうまかった。

普通に食えた。

ただ日本で言うところのカレーとは全く別の食べ物だ。

「スパイスで煮込んだスープ」と言えば分かりやすいだろうか。

俺は辛いもの可愛い女の子が苦手だ。

悪魔怪獣はなんでもこいだ。

インドにはスパイスが何十種類もあるうち、辛いスパイスは4種類くらいだと聞いた。

なんだインド余裕じゃん!

 

と思ったが

ほとんどのカレーにその4種類のスパイスが使われているらしい。泣

辛くないやつを頼んだからこのカレーは特に辛くなかった。

心配していたんだ。

バザールに行きたいって言えば勝手に友達の旅行会社に連れて行かれるし、ホテルに行ってくれって言えば勝手に親戚の旅行会社に連れて行かれるし。

もしかして辛くないカレーを頼んだら辛いおしるこでも出てくるんじゃないかって。

もし熱湯の前で「押すなよ!!」って言ったら、奴らは確実に押すだろうからな。

 

夜になって屋上に登ってみた。

 

期待通りなんにもない屋上だった。

ただぼろいネオンが辛うじてホテルらしさをかもし出していただけだ。

外に出ようか迷った。

インドの夜は危険な匂いとカレーの匂いがぷんぷんするではないか。

「夜は危ない」

これは発展途上国のお約束だろう。

脅されて金取られたり・・・

騙されてインドの山奥連れて行かれたり・・・

 

 

 

 

と、いうことで俺達は外に出てみた。

 

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思ったほど危ない雰囲気はないじゃない!

余裕余裕♪

ただ、ひとつ。

ひとつだけ言わせてもらえるなら・・・

野良犬よ。

あっち行ってくれ(泣)