第1話~安藤!インド行こう!

あの日高田馬場で初のワンマンライブを終えた。

この日みんなに突然インドに行く!と発表したんだけど。

特に反応はなかった!!

まぁ俺が「インド行く!」とか、想定範囲内ですもんね!!

けっ!!

航空券は12月14日初の1月25日着(一番安い5万円のチケットで45日fix)

インドへ行くことを決めた時、そのことを何人かの友達が知っていた。

その中の一人「安藤」が「俺も行くよ~」と軽いノリで一緒に行くことになっていた。

「安藤」とは俺のひとつ下の高校時代からの友達でとてもとても仲が良い。

簡単に言えば「ホモだち」である。

ごめん、簡単に言い過ぎた。

ホモではないがいろんな青春を共にしてきた仲である。

彼は自称「OP」(訳:親パワー)だが、ただ単にニートではなく外で遊ぶのが好きなニートだ。

高校時代遊びすぎて留年した安藤、大学に進んで海外へよく行くようになった。

一年前にはオーストラリアへ一年間の留学、もちろん英語はペラペラで、普段も片言の日本語を話す彼。

今思えば海外に行く前から日本語がおかしかった気がする・・・

安藤と初めて接点を持ったのは中学の時のこと・・・

校庭で遊んでた安藤、部活を始めようとしてた俺。

「おい!部活始めるから帰れよ!」

「うるせー!!」

・・・ありえない。

先輩に向かってそんな口を利く奴は俺だけだと思ってた!

「・・・お前ちょっと来い。」

男子便所に連れて行き説教を始める俺。

そして右手の拳を握り締めたその時。

「何やってんだよ~」

と、苦笑いをしながら当時の担任が便所に入ってくる。

「いやぁなんでもないっす!!ただぶっとば・・・いやなんでもないっす!」

それが俺と安藤の初対面だった(らしい・・・)

それから何年か経って、スケボーが流行った時期があった。

「安藤って奴がスケボーやってるらしいよ!」って友達に聞かされ誘ってみたのが安藤だったのだ。

それからサーフィンを始めたりバイクを始めたり気付けばいつも安藤は一緒にいた(確か・・・)

とにかく存在感の薄い男だった。

ある日友達何人かでバイクで走ってたときおまわりさんに追いかけられたことがあった。

追いかけられたというか待ち伏せされてた。

道路に止まるパトカーの横に長い棒を持って構えるおまわりさん。

俺が先頭だった。

「止まれ~!!」

と棒を振りかざすおまわりさん。

「はいはい!止まりますよ!止まればいいんでしょ!」

と言いながらスピードを緩めた瞬間スピードを上げ逃走。

後ろからみんなも逃走(一人棒でひっぱたかれながらも逃走)

そして普通の原付に乗ってた安藤におまわりさんが一言

「君!前の人たち危ないから気をつけなさい!」

いやそいつ友達だよ!!

他人じゃねぇよ!!

まぁそんくらい存在感の薄い男だった安藤。

だがしかし、一緒に遊んでるうちに「浦和の狂犬」と呼ばれるほど無意味にキレる男に変貌したのだ。

インドに行って狂犬病の野良犬に立ち向かえるのはこの男しかいないだろう。

喋れる英語と言えば「ファックユー」くらいの俺が決めたインドの旅に一緒に来てくれるという安藤。

いや!

安藤先生!!

ありがとうございます!!

一言だけ言わせてください!!

俺より目立つなよ。

そんなわけで俺はパスポートを取り(安藤に聞きながら)

ビザを取り(安藤に聞きながら)

航空券を取った(安藤先生に聞きながら)

航空券はEチケットというネット販売のチケットで、全てメールで済むという画期的な航空券だ(今じゃ普通なのかも知れないが)

チケットがメールで届いた。

「先日安藤様のお母様から連絡がありビジネスクラスに変更させていただきました」

・・・!??

・・・!!!?????

意味分からん!!

意味分からんぞ~!!

とりあえず分からないことがあったら安藤先生に電話だ。

聞くと安藤先生の母ちゃんがプレゼントしてくれたらしいではないか!!

ぶっちゃけインド行きにかなり緊張していて、かなり気張ってた俺には嬉しくないプレゼントだった。

俺は安藤の母ちゃんと飯食いに行ったりする仲良しだからいろいろ話したが、安藤の母ちゃんも悪気があってプレゼントしてくれたわけじゃないし、もちろんありがたくいただいた。

そして前日安藤の家に泊まると安藤の母ちゃんは俺に封筒を差し出した。

「これ餞別だから何かあったら使ってね」

中を見ると現金が大量に・・・

「いやもらえねぇ!!これはもらえねぇ!!」

「ダメ!何かあったとき使えばいいから!」

「いやもらえねぇ!」

「ダメ!!・・・・・

(繰り返し)

居酒屋の会計でもめるサラリーマンのような会話をして結局「お守り」として持って帰ってくるということでありがたく預かった。

俺の親方も餞別と言って金くれたし・・・

友達も現金やらタバコやらコンドームやら・・・

ほんと人に恵まれてるな俺・・・

インド行くのやめちゃおっかな!!

あ、そうだ。

唯一何もくれなかった人がいる。

「みはる」 (俺の母ちゃん)

あ、そんなことはねぇ!

この体をくれたのは母親だ。

ありがたいじゃないか!

インドでは何があるかわからないけど、こんなに丈夫な体をいただいて本当に感謝だぜ!

そんな母親から暖かいメールが届いた。

「保険入ってよね!!」

・・・。

はいはい。

インドに行く5日前から水のような下痢をしていた俺。

どうやら胃腸だけ先にインドに行ってしまったようだ。

胃腸を追いかけるかの様に俺たちはインドへ向かうのだった・・・

 

そして今回の旅の目的はそう

 

あのガンジス河で

 

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潜水だ。