~第8話~風船売りの少女

野良犬にビビリまくるアホな日本人二人組み(清水君と安藤先生)

俺たちは知らないうちに夜のバザールに紛れ込んでいた。

インドの夜のバザールは、中学生の時ディッキーズのチノパンを買いに行った上野を思い出させた。

時代は「腰パン」だ。

とりあえず俺達はバザールを抜け、さらに汚らしい路地裏を抜け、にぎやかな街に出た。

ここはデリーでも一番栄えてる(らしい)場所「コンノートプレイス」

一帯が円状になっていてそこにいろんな店が並ぶ。

その中には見慣れた「M」の文字や「KFC」の文字も並ぶ。

もちろんこの時間には開いてなかったが・・・

腹が減った俺達は飯屋を探した。

道端で「歩き方」を広げるとうさんくさいインド人が寄ってきて話が長くなる。

「歩き方」を読んでると「歩けない」現象が起こるのである。

インドで立ち止まり「地球の歩き方」を読むという行為はゲイの集会で服を脱ぐのと同じことである。

めんどくさいからひと通り無視。

だがその中にチベット人だという他のインド人と比べるとうさんくささが少しだけ小さめのおっさんがいて、その人に店を案内してもらった。

着いて来い!

と俺たちの前を歩くおっさん。

「ねぇ清水君・・・大丈夫かなぁ・・・」

小声で安藤先生が聞いてくる。

「てか別に小声じゃなくてもこのおっさん日本語わからないから普通に話せよ!」

「ねぇ!なんかずいぶん遠いんじゃない!?」

だんだん安藤先生の焦りが出てきた頃、ちゃんと店まで到着。

しかしすんげぇ高そうな店だ。

中に入ると高そうな人種の人たちがナプキンで口を拭いてたかどうかはぶっちゃけ覚えてないがそんな感じだ。

メニューが生意気にも英語で書いてあるためさりげなく安藤の注文に便乗。

当たり障りなさそうなカレーを食べた。

二人で750Rs(約¥1800)

 

たけぇぇ!!!

インド滞在45日で5万しか持ってないアホな日本人には致命的な金額である。

 

安藤先生が気前よくおごってくれた。

帰り道、突然箸を持つほうが右だか左だか忘れちまった二人はとりあえず迷子になった。

あぁでもないこうでもないと言いながら夜のインドを練り歩いた。

というか、気づいたら練り歩くはめになってた(怖)

 

まだ5歳くらいだろうか

俺たちに近寄ってきた風船売りの少女は、ボロ雑巾みたいな洋服を着て、裸足で歩いていた。

身振り手振りで俺たちに風船を買ってくれとアピールしてくる。

英語どころか公用語であるヒンドゥー語ですら彼女達は教わってないのである。

悲しそうな顔をする少女。

きっと演技だろう・・・大根役者ッぷりが劇団ひまわりの俺にはばればれであった。

そして彼女にも俺が元劇団ひまわりではないことはバレバレだったことだろう。

わかった!買えばいいんでしょ!買うよ!そんな目で俺を見ないでよ!

心優しい劇団四季の俺は5Rsを手渡した。

首を振る少女

え?

両手の指をこれでもかってくらい全開にして俺に突き出す。

10ルピーだといわんばかりに。

「っざけんなよ!まけろよ!今時ヤマダ電機だってそんくらいまけるぞ!?」

とは言えなかったので、

5Rsあげてバイバイした。

じゃあな!

5分後・・・

 

 

なんでまだいるんだよ!!!

「だからなんだっての!?5Rsあげたんだから許してくださいよ!もう!(泣)」

今にも泣きそうな顔で10Rsをアピールしてくる。

はっきり言って俺が泣きたい。

このままだと日本まで着いて来て5分おきに5ルピーづつ渡す羽目になりそうだ・・・

確かに日本人の俺が10Rs(25円)あげるのは簡単だけど、どこか腑に落ちない。

だって今にも泣きそうなのは他の誰でもなく滞在費5万のアホな日本人の俺なのだ泣

だがしかし!

俺たちはこんなときのために秘策を練っていたのだ。

鶴の折り紙

日本の伝統とも言えるこいつを見ればきっと感動して走って帰るに違いない。

もしかするとうれしすぎてうれションするかもしれねー

俺が折り紙を手渡すと少女は不思議そうにそれを眺め、急に笑顔になった。

近くにいた弟らしき子供にもそれをあげたら二人して笑顔になって走ってどこかへ消えていった。

俺は彼らの後姿に向かって叫んだ

You can fly!!

そういえば彼らは英語がわからないんだった。

うす汚いホテルに帰り俺達はダブルベッドに横になった。

なんとうす汚い光景だろう。

f:id:nichieitaxi:20190122211600j:plain



それにしてもインド・・・何もかもが刺激的だ。

あ、あと43日いなきゃいけないんだった。

実に憂鬱である・・・。