~第16話~大きな玉ねぎの横で

タージのある街アーグラ

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ホテルの屋上で優雅な夕食を食べようと安藤と二人椅子に腰かけた。

インドの屋上は嫌いじゃない。

かましい下界とのギャップが心地いいのだ。

しばらくすると屋上に一人の少年が現れた。

俺たちのところに来て小汚いメモ帳を広げ

「何にする!?」

(どうやらこいつはウェイターらしい)

安藤「俺このカレー!」

俺「俺も!!」(英語読めないから!)

安藤「あと、このジュース!」

俺「俺も!!」

少年「OK!それだけでいい?」

「おう!よろしく!」

 

カキカキ・・・

 

くしゃくしゃくしゃ・・・

ポイっ!!

なにしてんの!!!!?

こいつメモ帳を丸めて外に投げやがった。

「書いた意味ねぇじゃん!!」

「大丈夫!覚えてるから!」

「余計書いた意味ねーよそれ。早くオーダー通しに行けよ!」

歩いてる人に当たったらどうすんだよ・・・

屋上から下を見るとホテルの入り口付近に落ちたメモ帳を別の店員が拾って中に入っていった。

画期的!!!

ってやかましいわ!!

雑かっ!!

少年はニタニタしながらへんちくりんな英語で話しかけてくる。

「お前英語へたくそだな」

かましいっての!

お前もだっつーの!!

あの画期的なオーダー方法のせいでこいつは俺らの近くにずっといる。

名前は「ラフール」ホントかどうかしらんが。

歳は25歳。

25歳!?

嘘こけ!

中学生じゃん!!

見た目中学生じゃん!

「ホントだよバカ!」

「証拠見せんかい!!」

パンツを無理やり脱がせようとしたら必死に抵抗してきやがった。

「ごめんなさいごめんなさい!」

「わかればよろしい」

 

 

「はぁ・・・はぁ・・じゃあ俺と腕相撲しようぜ」

「お前反省してないだろ」

生意気にも俺に腕相撲を挑んできたから思いっきりぶっ倒してやった勢いで

パンツも脱がせてやろうとしたら半べそかきながら屋上から去って行った。

これから来る日本人がなめられちゃいけないからな!

しばらくするとラフールがカレーを持って屋上に上がってきた。

「お待たせいたしました!」

「おう。よろしい」

「では失礼します!ごゆっくりどうぞ!」

「おう」

「何やってんの?早く行けよ!」

 

「・・・チップちょうだい」

 

てんめぇぇぇぇぇ!!!!!

 

 

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ラフールとのやりとりをクールに眺める安藤先生もついでにぶっ飛ばしてあげようかと思った。

なんだかんだ生意気で可愛い奴でそのあとも屋上で遊んだんだけど、俺が持ってきた日の丸の鉢巻を巻いて写真を撮ってやったら喜んでた。

今思うとなぜ俺はあの鉢巻を持っていこうと思ったのかが謎だ。

 

ピーーー!!

ピューーー!!

甲高い笛の音がした方を見ると向こうの屋上で指笛を吹きながら長いロープを振ってるおじさんがいた。

わぁー変態だー

と思っていたらどこからともなく鳩の大群が!!

すげぇ!!

鳩の大群がめっちゃ操られてる!!

おじさんの振る長いロープの周りをぐるぐるぐるぐる。

これこれ!

インドはこうじゃなくちゃ!!

あれがロープじゃなくておじさんの腕だったら一生ついていこうかと思うくらいインドに来た感じがした。

インドに来て5日目

まだ腕の伸びるインド人には出会っていない