~第11話~天国と地獄

インドで初めて触れ合った日本語(安藤以外の)に感動したのもつかの間彼女達はそそくさとどこかへ消えていった・・・。

安藤が書類を書き終え、俺達はチケットを獲得したのだ。

明日俺達はニューデリーを出てアーグラへ行く予定。

腹が減ったので駅を出てメインバザールに戻り、レストランチックなものを探した。

ここで見つけた屋上のカフェは最高だった。

あくまでも今の俺たちにとってはである。

町のやかましいクラクション、人込み、野良犬、ノラ牛・・・

静かな屋上から見下ろすインドは俺の凍てついた心を一瞬にして溶かしてくれたのだ。

インドに来る前には

「途上国に行って肌で感じたいんだよ!先進国にいたってわからないんだよ!」

などと冒険家のようなことを言っていた俺だが、やはり途上国はコタツに入ってみかんを食べながらテレビで見るのが一番いいということに気づいた。

神様がいるのならこんな風に下界を見下ろしているんだろうか。

屋上のカフェで周りを見渡すとやはりそこには「欧米か!!」と、思わず突っ込みを入れたくなるような人たちがたくさんいた。

実際一人一人頭を叩きながら「欧米かっ!」と突っ込んで回ったら、出国前に書いて机の中に閉まっておいた遺書が役に立ってしまうのでやめておいた。

おそらく彼らもバックパッカーだと思うが、何故かかっこよく見えてしまうのだ。

飯はそこそこ高くそこそこまずかった

俺達は泣く泣く店を後にしてまたバザールに戻った。

 

うるせぇ!!

しかしうるせぇ!!

どこから湧き出てくるんだお前らは。

「はぁい!どこから来た?」

「見りゃわかんだろ!フランスだよ!!」

「ほっほっほ~!」

「どっか行けって・・・」

「俺、いいお土産屋さん知ってる!着いて来い!」

「いいってば・・・」

「これからどこ行く!?」

「明日アーグラ行くよ・・・」

「そっか!まぁとりあえず付いてきなよ!」

少しづつ覚え始めた英語が楽しいがためになんだかんだこいつといろいろ話しながら歩いていたら見たことある場所にたどり着いた・・・

 

「ここ俺の友達の旅行会社だから安心して!」

「・・・あのなぁ。昨日来たわ!!ボケ!死ね!」

気付けばいつもの旅行代理店の前に立っていた。

立ち止まってあーでもないこーでもないと話しているとインド人が集まってきてあっという間に囲まれた

なんだお前ら!?
また俺を騙す気か!?
あっちいけ!
しっしっ!!

するとその中の一人がおもむろに自分の股間を指差してこう言った。

「オイ日本人!俺のチ〇コはでかいぜ!」

なぜかインド人たちのチ〇コ自慢大会が始まった。

羽賀なんとかさんには負けるが、俺にだって詐欺師日本代表としてのプライドがある!!

ほぉ・・・

「見せてみんかい!!こらぁ!!」

インド人を無理やり脱がそうとする俺。

さっきまで自慢していたチ〇コを必死で守ろうとするインド人。

へっ!

口ほどにもない!

どうだ!

俺のを見せてやろうか!!

 

やめろ!!

出すな!!

結局インド人5,6人に押さえつけられ日本から持ってきた自慢の土産は見せてやることができなかった。

変わりに日本から持ってきた飴玉をやったらさっきまで5、6人だったインド人が10人くらいに増えた。

今時、働き蟻でもそんなに増えないぞ。

そんなこんなでインド人のチ〇コ自慢に嫌気が差して、歩き出した俺たち。

すぐさままた新しい一人のインド人がついて来る。

相変わらず馴れ馴れしく話しかけてくる。

もういちいち書かなくても分かるだろう・・・

どこ行く?
俺は日本人の彼女がいる。
来年日本に行く。

だなんだとしつこく話しかけてくる。

「いい所に連れてってやる」

って言うからつついていったら、なんだか豪華な土産物屋ではないか。

ちなみに言っておくが、この俺に学習能力というものはない(泣)

とりあえず中に入って物色したが・・・

たけぇ!!

めちゃくちゃたけぇ!!

日本で買えるわ。

ざけんな。

店を出てみるとそいつが待っていた。

そしてなにやら店員らしき人と仲良く話していた。

俺はふと気になって、彼に聞いてみた。

「お前いくらもらえんだ?」

「・・・ははは。・・・10Rsです」

正直な奴だ・・・。

「お前正直でいいやつだなぁ!」

「デショ!?次の店案内するよ!」

「ふざけんな!!ばか!」

インドでは土産物屋、ホテル、旅行会社、案内すれば騙された観光客が買おうが買うまいが、連れて行ったやつが店から金がもらえるシステムになってるらしい。
これはある意味画期的なシステムだ。

誰もがその会社の営業マンになれる仕組み、給料は完全歩合制だがどこかの国の派遣村でやいのやいの騒いでるよりはよっぽどマシだろう。

彼らが日本人や観光客を見つけては馴れ馴れしく話しかけ、どこかへ連れて行き金をもらうという、素晴らしいクソシステムのおかげで旅行者達はいちいち腹の立つ毎日を過ごさなくてはならないのだ。

まったくよ~・・・

あれ!?

安藤先生!?

なんか顔色悪くない!?

「清水君・・・俺、疲れた。帰ろうよ・・・」

そういやそうだな!

そうしているうちにも横にいるインド人は一生懸命俺たちに話している。

「ねぇねぇ!マリファナもあるからさ!」

うるさーーーーーーい!!!