~第6話~おうちにかえりたい

タクシーという名のジェットコースターは俺たちの目的地ニューデリー駅に着いた。

タクシーが目的地に着くのは当たり前だと思うかもしれないが、それは日本だけの常識だと考えたほうがよさそうだ。

ニューデリー駅前にメインの通りがある。

その名も「パハールガンジー

そこにいい宿があるとインドへ行った事のある友達に聞いてきた。

まずはホテルをとらないといけない。

いきなり野宿は恐ろしすぎる。

とりあえず駅のロータリーを出て、向かいに見えるバザールの入り口に向かった。

「おい!!チケットは持ってるのか!?」

一人のインド人が両手を広げて俺たちの行く手をさえぎる。

「なんのチケットだよ??」

と、安藤が返す。

「まぁいい、インドは初めてか?」

「そうだけど・・・」

「これからどこに行くんだ?」

「メインバザールだけど?」

「OH!!危ない!!絶対行っちゃだめだ!」

「!?なんでだよ!?」

「ナイフで刺される、強盗にあう、スリにあう!」

(ま・まじかよ・・・ありえなくはないしな・・・)

「とりあえず俺が政府の観光局を教えてやるからそこへ行けよ!」

「なんだそれ??」

「ちょっとこっち来て!ガイドブックは持ってるか?」

俺は3回くらいしかめくったことのない地球の歩き方を出した。

「いいか。ここにDTTDCって書いてあるだろ?ここに行くといい」

そう言って地図を指差す。

「ここはタダだし、相談に乗ってくれる。ホテルもここで予約できるから」

「どうする??安藤?」

「メインバザールは危ないっぽいし、行ってみようか!」

この瞬間に名前をつけるのであればぴったりの名前が見つかった。

「悲劇の始まり」
である。

「とりあえずリクシャーに乗れよ!50Rsでここまで連れてってくれるから!」

そういってリクシャーの溜まり場へ俺たちを連れて行く。

「リクシャー」とはインドのタクシーで、昭和のオート三輪みたいな乗り物だ。

三輪車で町中をスイスイ走り抜けてゆく。

もちろんラクションは鳴らしっぱなし、車が通れるスペースさえあればどこでも走るやっかいな乗り物だ。

名前の由来は日本の「人力車」から来てるらしい。

俺たちは言われるがままリクシャーに乗りDTTDC(政府観光局)へ向かった。

少し走るとリクシャーが止まった。

「さぁ!着いたぜ!」

小さい店の入り口のドアには「DTTDC」の文字。

DTTDCとは政府観光局の目印みたいなもんだ。

(この時俺は心の中でこの状況を少し疑っていた)

店に入るとおでこに赤い点を付けた完全なまでにうさんくさいおっさんが出てきて、奥の方に連れて行かれた。

何個かの仕切りで区切っただけの部屋。

どこかで見たことあるこの風景。

そうだ。

ピンサロだ。

そのうちのひとつの部屋に案内され俺たちは椅子に腰掛けた。

日本語を巧みに使うおっさんが世間話を始めた。

「どこから来た?」

「インドは初めて?」

「どこへ行きたい?」

など、平凡な話をしているうちに打ち解けてきた。

「とりあえずデリーで泊まるホテルを探してるんだけど」

「おー!ホテルなら今ここで予約できますよ!」

「いくら?」

「お勧めは600Rsのホテルで結構いいところですね!」

「高いなぁ・・・」

俺たちは最初、デリーからムンバイに行き、そこからインドの楽園ゴアに行こうと計画を立てていた。

だが、安藤が10日間で帰らないといけないから、10日後にはデリーに戻りたい。

その計画を赤い点に向かって話すと、それは難しいと言う。

年末のゴアは多くの観光客が押し寄せるため、今からだと列車が取れないというのだ。

しかも予算はいくらと聞かれ

安藤は「一週間で○○ドル」

俺は「45日で3万だ!」

と言うと爆笑された。

「3万で45日インドにいれると思ってんのか!?」

と馬鹿にされる日本人。

そういやなんかこいつ・・・ムカつく。

顔がムカつく!

てかさっきからおでこの赤い点が、こすったのかなんだか知らないが、横に伸びてるではないか。

気になってしょうがない。

そこでおっさんは頼んでもない提案をしてきた。

「まずここからアーグラヘ行って2泊、その後ジャイプルで2泊、デリーに戻ってきて飛行機を待つのがいい。これなら180$でチケットとってあげるよ」

(高けぇ~・・・。てか怪しい~!でも安藤もきっともう気付いてんだろうな、こいつの怪しさ)

「高い!!無理!!」

赤い点「高くないです!これが普通の値段です!」

(絶対怪しい・・・流れ的に怪しい・・・あ。安藤もそろそろ戦闘モードに切り替わってる頃かn・・・

「清水君!!こんなもんだって!普通こんなもんだよ!!これにしようよ!」

ええええええぇぇぇぇ!!??

おかしいだろ!!

ついさっき空港でインド人をあんだけ疑ってた人が・・・。

(ん?まてよ・・・?てか、そもそもここは駅の奴が指差した地図の場所と違う気がする・・・)

「ちょっと待って!」
と、俺は地球の歩き方を開いて地図を見た。

さっき駅で説明された地図によると、そのDTTDCの前には交番があるみたいだ。

確かにここはDTTDCに近いけど地図とだいぶ違うなぁ・・・。

(でもここで騒いだら危なそうだなぁ・・・とりあえず安藤をうまく説得してなんとかここを出よう。おっさん少し日本語分かるみたいだし安藤に直接伝えたら危ないなこりゃ・・・)

そりゃもう一人でいろいろ考えたわ。

「しょんべん!!トイレ行きたい!」

俺はおっさんに行って外へ出た。

そして目の前にある唯一の建物が交番か確かめることにした。

建物の前に座ってたインド人に「ここは何?」って聞くと

「え?俺んちだけど?」と言われた・・・。

(嘘じゃん!!DTTDCじゃないじゃん!!)

赤い点を信用しきってる安藤をこのまま置いて俺だけ逃げちゃおうかと思ったのは絶対に内緒だ。

冷静を装って店に戻った。

安藤とおっさんがまだ話してる。

「清水君!やっぱりこんなもんだよ!俺が払ってもいいしツアー組んでもらおうよ!」

安藤先生・・・

俺、バスケがしたいです・・・。

(やっぱりさっき一人で逃げるべきだった!!)
と、この時思ったのは・・・絶対内緒だ!

もういい!!

「とにかく俺は無理!!高い!」

「高くないです!」

おっさんが半分怒ったように言う。

「ダメダメ!!自分達でやるからいい!!」

「分かりました!160$で・・・どうですか?」

(政府機関が値下げするかボケ!!)

「ツアーは組まない!!だけど今日泊まるホテルだけ予約したい!」

「ツアー組まないならホテルも予約できないです!!」

おっさんは顔が引きつってた。

「じゃあお前に用はない!さようなら!行くぞ安藤!!」

俺達は引きとめようとする最初だけ赤い点があったインド人を振り切り強引に外に出た。

「なぁ安藤。地図見てみろよ。ここDTTDCじゃないぜ?」

「マジ?」

 

大通りに出ようと歩き始めるとまたインド人が近寄ってきた。

「どこに行くの!?」

「あーうっさいうっさいどっか行ってくれ」

「あそこはノーガバメント(政府関係じゃない)だぜ!ただのプライベート旅行店だ!ははは!」

とさっきの店を指差すインド人。

やっぱりな・・・。

とにかく俺達はホテルを取らないと野宿するハメになってしまう。

しかもさっきの偽ガバメントで3時間くらい損した。

大通りに出て地図を開くとずーっとインド人がついてきて隣で喋ってる。

「ホテルなら俺が案内してやる!」

「だからいいってば!自分で決めるから!」

「とにかく俺のリクシャーに乗ってよ!ホテル連れてくから!」

「いいってば!」

さらにもう一人インド人が現れ喋ってくる。

「タクシー??」

「いい!!いらない!」

「ホテルか?」

・・・・・・。

俺はインドに来て何かあったら最後の手段で使おうと思ってた単語をかなりの序盤で使った。

 

「あぁぁぁぁぁシャラップ!!!!」

「お前らさっきからうるせぇんだよ!!どっか行けよ!ムカつくなぁ!!もう!!」

もうこの際インド人を怒らせたっていいや!

その前に俺が怒ってるのだ!!

お前らあんまりうるさいと天ぷらにするぞ!!

日本人なめんな!!

インド初日の出来事である。

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~第5話~250ルピーのジェットコースター

休憩室で過ごすこと数時間。

埃っぽい景色に光が差し始め

・・・朝が来た。

25年生きてきてここまで朝に感動するのはこれが初めてじゃないだろうか。

とりあえず俺たちはここを離れ、一番栄えてると思われるニューデリー駅に行くことに決めた。

さて、どうやって行こうか・・・。

目に映るほとんどインド人が怪しく見えるもんだから、美人のスッチーらしきインド人に声をかけ尋ねた。

「ヘイ彼女!ニューデリーに行きたいんだけどどうやって行けばいいんだい!?」

「タクシー」

インド人は女性まで無愛想なのだろうか・・・。

地球の歩き方によると「タクシーは危険だ」みたいなことが書いてある。

でもニューデリーに行くにはタクシーだけだと言うではないか!!

タクシーは危ないって聞いてきてんのに、いきなりその危ないやつしか手段がないなんて・・・。

かえろっか・・・安藤?

そうだ!

帰ろうよ安藤先生!!

とりあえずロータリーらしきところに行くと、たちまち声をかけられた。

インド人「タクシー??」

俺「NO!」

とっさにNOと答えたが、タクシー乗るしかないんだよな俺たち。

「あ、清水君!俺もうちょっと両替したいわ!ちょっと待ってて!」

おかしいだろ~

さっきしとけよ~

てか一人にしないで~(泣)

安藤が俺の気も知らずにまた両替しに行きたいとばかげた事を言い出し、仕方なく外で待ってることにした。

いきなり一人ぼっちですよ!!

もう!!

だから俺をそんなに見つめるんじゃない!!

あっち行け!!

しっしっ!!

インド「タクシー??」

俺「NO!!」

インド「タクシー??」

俺「NO!!」

インド「タクシー??」

俺「NO!!!!!」

てめぇ!!何回言わせんだバカ野郎!!

俺は「YES」と「NO」と「Fuck」しか話せないんだ馬鹿!

そんな奴らを一人で相手してるうちにだんだんインド人に慣れてきた。

インド「タクシー??」

俺「いくらだよ?」

インド「どこまでいくんだ?」

俺「ニューデリー駅」

インド「500Rsだ」

俺「高い!!消えろバカ!」

(実際の相場が分からないからとりあえず高いことにしておいた。)

インド「高くない!普通だ!」

俺「うるさい!聞いただけだ!俺は友達待ってるから無理!」

ふてくされてどっかに消えた運転手。

するとすぐに違う男が来た。

インド「タクシー??」

俺「いくらだ?」

インド「どこまで?」

俺「ニューデリー駅だ」

インド「500Rsだな」

俺「高い!!どっか行け!」

(あれ・・・ほんとは500Rsくらいなのかな・・・?)

なんて思ってるとさっき最初に話してたインド人が電話かけながら俺の前を通り過ぎた。

すると今話してた男の携帯が鳴り、電話を受けた・・・

グルじゃん!!

お前ら仲間じゃん!!

ようするに500Rsが相場だと思わせたいがためにグルになって俺を捕まえようとしたわけだ・・・。

呆れた・・・。

その後もいろんなインド人が話しかけてきたもんだから、気付けばFuck以外の英語も喋ってたわ。

そんなもんだな。

結局一番安かったやつが250Rsだった。

・・・あれ?

そういえば・・・

安藤帰ってこないんですけど!!

ぶっちゃけそろそろ怖いんですけど!!泣

心配になって空港の中に潜入。

安藤「終わったよ~!」

向こうから歩いてくる安藤を見つけた時は迷子になった我が子との再会のような嬉しさがこみ上げてきた。

ふぅ・・・

さぁ安藤行くぞ!

俺「でさぁ、250Rsって言ってたけどどうするよ?」

安藤「んじゃそれで行くか!」

と、250Rsと言って来たインド人を捕まえた。

インド人「ここで待ってろ。今車持って来るから」

と言ってどこかへ消えた。

・・・5分経過。

別の奴が話しかけてくる。

いちいち相手すんのがめんどくさい!!

・・・10分経過。

てかあいつこなくね??

俺「ねぇ安藤?あいつ他にいい客見つけたっぽくね?」

安藤「ん~。怪しいね!そういえば地球の歩き方にはプリペイドタクシーが一番安心だって書いてあったからそれにしようか!」

先に言え。

そして俺たちはプリペイドタクシーに乗ることにした。

ニューデリー駅まで250Rsだった。

黒に緑のラインの軽ワゴンが何十台も溜まってて、その中の自分達の車の番号を探しそれに乗った。

運転手はどうやら英語が話せないっぽい。

助手席にもう一人インド人が乗る・・・。(なんでわざわざ二人!?)

隣の安藤先生はもうすでに戦闘モードに切り替わってる・・・。

安藤「清水君!このチケットは最後に渡さないとダメなんだよ!最後だよ!」

俺「あ、ああ・・・なんで?」

安藤「先に渡すと後から余計に請求されたりするんだって!」

俺「そっか、わかったぜ!!」

運転手がなにやら安藤に向かって喋っている。

チケットを貸せと言ってる様だ。

安藤「ダメ!!絶対ダメ!!」

安藤はチケットをまるで生まれたばかりの愛娘を抱くかのように握り締めた。

そのまま車が走り出したと思ったら受付みたいなところで停まった。

運転手がため息混じりに呆れた顔をした。

後部座席の窓を開けチケットにサインしないといけないから受付に渡せって言ってるようだ。

安藤はさっきまで生まれたばかりの愛娘のように大事に持っていたチケットを、今度はまるでグレ始めた中学生の長男のような扱いで受付にチケットを渡した・・・。

受付の人が普通にサインしてチケットは返された・・・。

どんだけインド人を疑ってんだ安藤先生は。

そしてタクシーはインドの町を走り出したのだ。

キュルキュルキュル!!!

「ぎゃぁぁぁぁ~!!停めてぇぇぇぇ~!!」

「ぶつかるって!!あぶねぇって!!」

・・・俺たちはタクシーに乗ったつもりだったのだが間違えてジェットコースターに乗ってしまっていたようである。

とにかく猛スピードで走る。

車線なんかお構いなし。

車ひとつ分開いてればどこでも走りやがる。

ラクションは鳴りっぱなし。

道端にぐちゃぐちゃにつぶれた車が止まっている・・・。

事故だ。

そりゃ事故るわ!!

インドにもたまぁ~に信号がある。

インドでも一応赤信号では止まるらしい。

止まるとどうなるかって?

物乞いが寄って来る。

窓にへばりついて手を出してくる。

指があるのかないのかわからない様な手で窓をこする。

皮膚はただれて固まってる。

言葉が話せないであろうその人はウーウーとうめき声を上げるだけだ。

これがバイオハザードだったらとっくに撃ち殺していただろう。

でもこれは目の前の現実。

彼は一人の人間なんだ。

俺はどうしていいか分からなくなった。

確かにテレビで見たことはあった。

話にも聞いていた。

パチスロのメダル1枚分の20円を差し出せば、きっと彼は喜んでその場を立ち去ってくれるんだろう。

で、シカトした。

正直

怖かったんです(泣)

だんだんと埼玉の秩父地方の様に景色が都会らしくなってきた。

道路の脇には立ちしょんする人、野グソする人、横になって寝てる人、ロバ・・・

ロバ!?

あの日からインドに行こうと決めていたのですが、俺たちは間違えて動物園のふれあい広場に来てしまっていたようだ。

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~第4話~でっででー!デリー空港

夢の中でスッチーとあんなこ(以下省略)

午前2時

んあぁぁぁぁ!!

起きたっ!!

先生の調子もまぁまぁよさそうかな??

「ねぇ安藤?」

「・・・だ、だるい・・」

まぁいいさ、俺たちはもうインドまで来ちまったわけだ。

あとはどうにでもなるって!

「なっ!安藤?」

「だるい・・・」

 

 

・・・頼みますよ先生!!泣

てかインド人いっぱいいるんですけど!!(当たり前だが)

ターバンが妙にうさんくさいんですけど!!

みなさん絨毯に乗ってここまでいらっしゃったほうがいいんじゃないでしょうか?

安上がりだし。

空港を出た俺たち。

「うわぁ~霧がすごいねぇ?安藤?」

「そうだねぇ~」

霧じゃなくてでした。

インドって「カレー臭い」とか言われてるけど、俺にはまったく臭さが感じられなかった・・・。

もしかしてもともと俺自体がカレー臭いのだろうか・・・。

これぞまさに加齢臭!!(もし加齢臭がしていたら教えてくれ)

そう、まずはあれだ!

「両替」だ!!

で、どこで両替してくれんの?

調べによると「両替屋」でちょろまかされたりすることが多いらしいじゃないか。

まぁ発展途上国の国はどこへ行ってもそうだと思うが。

よし!

あそこで両替だ!(てか、なんで両替ごときでここまで気張らないといけないんですか!?)

両替カウンターらしきところへ向かうレース直前の馬のように気張った日本人と、すでに渡り鳥にまぎれて国を渡ってしまった完全にくたびれたオウムのような日本人二人。

カウンターには鬱蒼とヒゲを生やしたおっかないおっさんが三人くらいでクッキーを食べてた。

これがアメリカの警官だったらやはりドーナツだったのかもしれないが、ここはインドである。

どうでもいいが、その象のえさのような不味そうなクッキーを美味そうに食べながら仕事をするのはやめてもらえないだろうか。

お前ら仕事する気あんのか!?

しかもみんなして俺のことガン見なんですけど!

怖いんですけど!!

日本に初めて連れてこられえたパンダになった気分だ。

「安藤!ここはまずい、止めよう!あいつら顔から俺たちを騙そうオーラが出てる!」

「大丈夫だよ」

さすが先生・・・。

落ち着き払ってるじゃないか。

なんか安藤が輝いて見え・・・

・・・あれ?

顔色悪いですよ!!

「いいよ、ここで・・・」

ただの諦めモードですか!?

インドの通貨は「ルピー」で、この時のレートは1ルピーが約2.5円だ。

ここでは日本であらかじめ両替しておいた米ドルからルピーに両替。

1$が44ルピーだった。

俺は頑丈に腹に巻いた旅行用のポーチからドルを出し先頭のヒゲに渡した。

それにしても無愛想な奴らだ・・・。

俺「よし、300$両替してくれ。」

ヒゲ「@0t872んfms:あs」

俺「なんだって!?せめて英語にしてくれないかなぁ!!」

ヒゲ「ぬp。:y8い{>H+・・・もぐもぐもぐ」

安藤「オーケーオーケー!」

英語なんだな!?

それは英語なんだな!?

わかった。

わかったからその不味そうなクッキーを飲み込んでから喋ってくれ。

そして両替した金を放り投げるのやめてくれ!

感じ悪い。

なんなく(?)両替を終えた二人。

夜中の3時、ここで行動するのは危険極まりない。(らしい)

まぁ仮に何かしら動いたとすれば二人してインドの山奥に直行だろう。

インドの山奥で鉄砲を打つために来たわけじゃないのだ。

とりあえずガイドブックに載っている待合室を探しに歩いた。

あ!

日本人だ!

有名人なのかな?

空港の外になにやら日本人らしきポスターを発見した。

ポスターに近寄る俺たち。

・・・MISSING PERSON??

あれ??

思いっきり行方不明者ですけど安藤先生!!

か・・・帰ろっか・・・。

そんなポスターに背を向けて俺たちは待合室を探しに行った。

へぇ~インドもコスプレとか流行ってんだな~

みんな迷彩服なんか着ちゃってさ~

モデルガンなんか持っちゃっ・・・

本物かいっ!!

てか銃口をこっち向けるなってば!!

あぶねぇから!!

あぁぁぁぁぁぁああああ!!!

もう全部疲れる!!

こんなんじゃ待合室に着くまでにミイラになっちまうよ。

なんとか待合室らしき部屋の前まで来た。

一人のおっさんが入り口の椅子に座って、中に入って行く人と話をしている。

人がいなくなるとうつらうつらと居眠りをしながらそこに座っているインドオヤジ。

たまに金を受け取ったりしてるところをみると有料だろうか・・・。

俺たちはしばらくその様子を遠めに見ていた。

「どうする?安藤?」

「たぶん有料だろうけどおじさん居眠りしてるからその間に入っちゃおうよ!」
(いつのまに元気になってんだよ・・・)

「OK先生!!」

おっさんがこっくりこっくりしてる隙に・・・

いまだ!!

「ヘイ!!ウェイウェイウェイ!!」

ガッチリ腕を捕まれました。

ですよね・・・。

オヤジ「金払えよ!馬面!!」

俺「誰が馬面やねん!!」

オヤジ「30ルピーだ」

俺「はいごめんなさい」

二人分60ルピーを払って待合室に入った。

中はベンチがずらーっと並んでるだけの埃臭い部屋。

でもここはインドのお金持ちらしき奴しかいないみたいだ。

そりゃそうだ、庶民の平均日収が100ルピーのインドで休憩に30ルピーも取られてたら誰も入るわけがない。

中にはものすごい数の札束を広げてたおっさんもいたが、きっとあいつは絨毯に乗ってきたタイプだ。

安上がりだし。

俺は寝れないし安藤はいつのまにかまた半死状態・・・。

とりあえず朝を待ってから出発することにした。

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~第3話~台北

スッチーと夢の中であんなことやこんなことをしてるうちに俺たちは台北に着いた。

空港に着いたはいいが辺りを見回しても漢字ばっかりで「外国感」がない!

ちなみにその漢字は全然読めたもんじゃない!

二人してグデングデンになりながらデリー行きの飛行機を待った。

茶店らしきところでジュースを買おうとした安藤。

「ねぇ清水君、ここって円使えるのかなぁ?」

「しらねぇよ!使えんじゃねぇの!?」

「ちょっと聞いてみてよ!」

「あ・・・え、うん・・・」

先生は意地悪だ。

「てかどうやって聞けばいいんだよ!!」

「キャナイユーズイェン?で通じるんじゃない?」

じゃない?ってなんだよ!この野郎

「分かりました先生!自分頑張ります!」

店員がびくびくしてる俺に気付いた。

俺「へいへいおねーちゃん!!キャンアイ・・ゆ、ユー

店員「OK!OK!」

まだなんも言ってねぇだろーが!!

「イェンイェン!!使えんのか!?」

「YES!」

ほら!

俺だってやればできるのさ。

高校時代に英語の授業サボって屋上で寝てた甲斐があったわ。

やがて飛行機が到着、俺たちは台北を出てデリーへ向かった。

やはりビジネスクラス最高!!

スッチー!!

スッチー!!

アイムスッチー!!

飛行機の中でテンションが上がり始めた俺。

一定の緊張を超えるとテンションが上がるもんだ。

その一定が俺の場合やたらと低い。

ここぞとばかりに英語の勉強を始めた。

日本で買った「ひとこと英会話BOOK」を開く。

ふむふむ・・・

ホントにこんな言い方で通じるんだろうか・・・

「安藤??・・・ねぇ?安藤!?」

「・・・ん?ちょ・・・ちょっとしんどいわ俺・・・」
(いきなり具合悪くなる安藤先生)

はぁ!!??

なんだそれ!!??

先生いなくなったら俺どうないしたらええねん!!

スッチーに口説かれたらどないしたらええねん!!

チャンスを逃したら責任とってくれるんかい!!

おい安藤!!

頼むしっかりしてくれ安藤!!

「いや・・・マジ・寝かせて・・・」

けっ!!

分かったよ。

俺にだってアメリカ育ちのプライドがある!

思いっきり日本だろって思ったあなた。

俺は正真正銘のアメリカ育ちニダ!

ちくしょう!!

こーなったら一人で生き抜いてやるわい!!

「へいへいスッチー!!オレンジジュース!!」

「ハイ。オレンジジュースデスネ。」

ほらみろ。

俺だって英語くらい喋れるんだって!!

一生そこで寝てればいいさ!!

・・・あれ。

スッチーが食事のメニューらしきもの持って来たけどなぁ・・・

なんか言ってるけど・・・

安藤先生!!

起きてくださいよー!!(泣)

・・・・・。

もういいや。

飯はあきらめて俺も寝る!!

~第2話~成田から台北へ

「遠足の前日気分」ってこのことだな。

寝れない!!

興奮して寝れない!!

安藤んちじゃオ〇ニーできないから寝れない!!

朝飯食って安藤の婆ちゃんの家の仏壇に線香をあげに行った。

ところが、ろうそくに火を付けようとしても全然付かない!!

「俺次で付かなかったらインド行くのやめるわ・・・」

と、安藤。

なんとか線香をあげていざ出発!

安藤のママが「新都心駅」まで送ってくれて、そこからバスに乗っていざ成田へ。

俺は一人興奮していたが、隣の安藤先生は普段どうり・・・。

さすが先生だけある。

俺も平静を装っていたが、きっと鼻の穴がいつもより30%くらいでかくなっていたに違いない。

バスは成田に着き、俺たちは15kgのバックパックを背負った。

普通に重い・・・。

とりあえず出発までの時間最後の(本当に最後になるかもしれない)「日本料理」を
食べることにした。

そして俺は母と約束した「保険」とやらに入ることにしたが、どこも高いからやめようかと思った。

結局「死亡」だけの保険に入って自分で勝手に納得した。

そう。

俺たちは「ビジネスクラス」なのだ!

普段ライブとかで地方に行くときはもちろん「エコノミー」だし。

人生で初の「ビジネスクラス」だ。

まぁちょっとばかし「リッチ」な気分にしてくれんだろうな!!

なんて思いながら搭乗手続きを済ませた。

変なチケットもらって「ラウンジ」(待合室)を案内された。

ぬわぁんじゃこりゃ!!

超VIP!!

ビールにワインにジュース、おつまみにおにぎりサンドイッチ、セクシーなパツ金美女・・・

飲み放題食べ放題やり放題!!

いや・・・パツ金美女はいなかったかもしんない。

そして周りを見渡せば「ジェントルマン」(たぶん)ばかり。

シャメとか撮りまくる俺(ただのアホ)

やっぱりそこでも先生は違った・・・。

落ち着き払ってた・・・。

「おお。すごいね。」

俺は今すぐにでもロンダードからバック転してひねりも入れたい気分だったね。

出来ないからやらなかったけど。

この時はさすがに唄えもしない「RAP」が唄いたくなったね。

飛行機が登場!!

俺たちは搭乗!!

覚めやらぬ緊張!!

そこに愛情!!

セイホ~♪

・・・んなこたない。

シートでかっ!!

つーかスチュワーデスのおっぱいでかっ!!

しかもスリットとか入っててたまらんわい!!

いやぁおなか一杯!!

さっきおにぎり食ったし。

まじ「エアチャイナライン」お勧め。

スリットフェチにはたまらないですよ。

まぁ別にスリットフェチでもなんでもないからどうでもよかったんだけど。

俺たちはまず「台北」に向かった。

台北で乗り換えてそこからインドの首都「デリー」に行くのだ。

台北まで約4時間、TVにゲーム映画にAV・・・

いや、AVはなかった気がする・・・。

多分俺が見ていたスチュワーデスのいる風景がAVのワンシーンに見えただけだろう。

飯はなかなかうまいような・・・よく分からん味だった。

多分俺みたいな人間には理解できない味なんだと思う。

「エコノミー症候群」になっちゃうサッカー選手の「高原」とかにしか理解できない味なんだろうな。

てか俺も安藤もこの時点ですでに具合が悪い!!

実は10日のワンマンライブ当日、俺は38度の熱があってそれからよくなってなかった。

安藤も俺のが移って風邪気味だった。

とにかくAVも見ずに寝ることにしたのだった。

 

第1話~安藤!インド行こう!

あの日高田馬場で初のワンマンライブを終えた。

この日みんなに突然インドに行く!と発表したんだけど。

特に反応はなかった!!

まぁ俺が「インド行く!」とか、想定範囲内ですもんね!!

けっ!!

航空券は12月14日初の1月25日着(一番安い5万円のチケットで45日fix)

インドへ行くことを決めた時、そのことを何人かの友達が知っていた。

その中の一人「安藤」が「俺も行くよ~」と軽いノリで一緒に行くことになっていた。

「安藤」とは俺のひとつ下の高校時代からの友達でとてもとても仲が良い。

簡単に言えば「ホモだち」である。

ごめん、簡単に言い過ぎた。

ホモではないがいろんな青春を共にしてきた仲である。

彼は自称「OP」(訳:親パワー)だが、ただ単にニートではなく外で遊ぶのが好きなニートだ。

高校時代遊びすぎて留年した安藤、大学に進んで海外へよく行くようになった。

一年前にはオーストラリアへ一年間の留学、もちろん英語はペラペラで、普段も片言の日本語を話す彼。

今思えば海外に行く前から日本語がおかしかった気がする・・・

安藤と初めて接点を持ったのは中学の時のこと・・・

校庭で遊んでた安藤、部活を始めようとしてた俺。

「おい!部活始めるから帰れよ!」

「うるせー!!」

・・・ありえない。

先輩に向かってそんな口を利く奴は俺だけだと思ってた!

「・・・お前ちょっと来い。」

男子便所に連れて行き説教を始める俺。

そして右手の拳を握り締めたその時。

「何やってんだよ~」

と、苦笑いをしながら当時の担任が便所に入ってくる。

「いやぁなんでもないっす!!ただぶっとば・・・いやなんでもないっす!」

それが俺と安藤の初対面だった(らしい・・・)

それから何年か経って、スケボーが流行った時期があった。

「安藤って奴がスケボーやってるらしいよ!」って友達に聞かされ誘ってみたのが安藤だったのだ。

それからサーフィンを始めたりバイクを始めたり気付けばいつも安藤は一緒にいた(確か・・・)

とにかく存在感の薄い男だった。

ある日友達何人かでバイクで走ってたときおまわりさんに追いかけられたことがあった。

追いかけられたというか待ち伏せされてた。

道路に止まるパトカーの横に長い棒を持って構えるおまわりさん。

俺が先頭だった。

「止まれ~!!」

と棒を振りかざすおまわりさん。

「はいはい!止まりますよ!止まればいいんでしょ!」

と言いながらスピードを緩めた瞬間スピードを上げ逃走。

後ろからみんなも逃走(一人棒でひっぱたかれながらも逃走)

そして普通の原付に乗ってた安藤におまわりさんが一言

「君!前の人たち危ないから気をつけなさい!」

いやそいつ友達だよ!!

他人じゃねぇよ!!

まぁそんくらい存在感の薄い男だった安藤。

だがしかし、一緒に遊んでるうちに「浦和の狂犬」と呼ばれるほど無意味にキレる男に変貌したのだ。

インドに行って狂犬病の野良犬に立ち向かえるのはこの男しかいないだろう。

喋れる英語と言えば「ファックユー」くらいの俺が決めたインドの旅に一緒に来てくれるという安藤。

いや!

安藤先生!!

ありがとうございます!!

一言だけ言わせてください!!

俺より目立つなよ。

そんなわけで俺はパスポートを取り(安藤に聞きながら)

ビザを取り(安藤に聞きながら)

航空券を取った(安藤先生に聞きながら)

航空券はEチケットというネット販売のチケットで、全てメールで済むという画期的な航空券だ(今じゃ普通なのかも知れないが)

チケットがメールで届いた。

「先日安藤様のお母様から連絡がありビジネスクラスに変更させていただきました」

・・・!??

・・・!!!?????

意味分からん!!

意味分からんぞ~!!

とりあえず分からないことがあったら安藤先生に電話だ。

聞くと安藤先生の母ちゃんがプレゼントしてくれたらしいではないか!!

ぶっちゃけインド行きにかなり緊張していて、かなり気張ってた俺には嬉しくないプレゼントだった。

俺は安藤の母ちゃんと飯食いに行ったりする仲良しだからいろいろ話したが、安藤の母ちゃんも悪気があってプレゼントしてくれたわけじゃないし、もちろんありがたくいただいた。

そして前日安藤の家に泊まると安藤の母ちゃんは俺に封筒を差し出した。

「これ餞別だから何かあったら使ってね」

中を見ると現金が大量に・・・

「いやもらえねぇ!!これはもらえねぇ!!」

「ダメ!何かあったとき使えばいいから!」

「いやもらえねぇ!」

「ダメ!!・・・・・

(繰り返し)

居酒屋の会計でもめるサラリーマンのような会話をして結局「お守り」として持って帰ってくるということでありがたく預かった。

俺の親方も餞別と言って金くれたし・・・

友達も現金やらタバコやらコンドームやら・・・

ほんと人に恵まれてるな俺・・・

インド行くのやめちゃおっかな!!

あ、そうだ。

唯一何もくれなかった人がいる。

「みはる」 (俺の母ちゃん)

あ、そんなことはねぇ!

この体をくれたのは母親だ。

ありがたいじゃないか!

インドでは何があるかわからないけど、こんなに丈夫な体をいただいて本当に感謝だぜ!

そんな母親から暖かいメールが届いた。

「保険入ってよね!!」

・・・。

はいはい。

インドに行く5日前から水のような下痢をしていた俺。

どうやら胃腸だけ先にインドに行ってしまったようだ。

胃腸を追いかけるかの様に俺たちはインドへ向かうのだった・・・

 

そして今回の旅の目的はそう

 

あのガンジス河で

 

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潜水だ。