~第5話~250ルピーのジェットコースター

休憩室で過ごすこと数時間。

埃っぽい景色に光が差し始め

・・・朝が来た。

25年生きてきてここまで朝に感動するのはこれが初めてじゃないだろうか。

とりあえず俺たちはここを離れ、一番栄えてると思われるニューデリー駅に行くことに決めた。

さて、どうやって行こうか・・・。

目に映るほとんどインド人が怪しく見えるもんだから、美人のスッチーらしきインド人に声をかけ尋ねた。

「ヘイ彼女!ニューデリーに行きたいんだけどどうやって行けばいいんだい!?」

「タクシー」

インド人は女性まで無愛想なのだろうか・・・。

地球の歩き方によると「タクシーは危険だ」みたいなことが書いてある。

でもニューデリーに行くにはタクシーだけだと言うではないか!!

タクシーは危ないって聞いてきてんのに、いきなりその危ないやつしか手段がないなんて・・・。

かえろっか・・・安藤?

そうだ!

帰ろうよ安藤先生!!

とりあえずロータリーらしきところに行くと、たちまち声をかけられた。

インド人「タクシー??」

俺「NO!」

とっさにNOと答えたが、タクシー乗るしかないんだよな俺たち。

「あ、清水君!俺もうちょっと両替したいわ!ちょっと待ってて!」

おかしいだろ~

さっきしとけよ~

てか一人にしないで~(泣)

安藤が俺の気も知らずにまた両替しに行きたいとばかげた事を言い出し、仕方なく外で待ってることにした。

いきなり一人ぼっちですよ!!

もう!!

だから俺をそんなに見つめるんじゃない!!

あっち行け!!

しっしっ!!

インド「タクシー??」

俺「NO!!」

インド「タクシー??」

俺「NO!!」

インド「タクシー??」

俺「NO!!!!!」

てめぇ!!何回言わせんだバカ野郎!!

俺は「YES」と「NO」と「Fuck」しか話せないんだ馬鹿!

そんな奴らを一人で相手してるうちにだんだんインド人に慣れてきた。

インド「タクシー??」

俺「いくらだよ?」

インド「どこまでいくんだ?」

俺「ニューデリー駅」

インド「500Rsだ」

俺「高い!!消えろバカ!」

(実際の相場が分からないからとりあえず高いことにしておいた。)

インド「高くない!普通だ!」

俺「うるさい!聞いただけだ!俺は友達待ってるから無理!」

ふてくされてどっかに消えた運転手。

するとすぐに違う男が来た。

インド「タクシー??」

俺「いくらだ?」

インド「どこまで?」

俺「ニューデリー駅だ」

インド「500Rsだな」

俺「高い!!どっか行け!」

(あれ・・・ほんとは500Rsくらいなのかな・・・?)

なんて思ってるとさっき最初に話してたインド人が電話かけながら俺の前を通り過ぎた。

すると今話してた男の携帯が鳴り、電話を受けた・・・

グルじゃん!!

お前ら仲間じゃん!!

ようするに500Rsが相場だと思わせたいがためにグルになって俺を捕まえようとしたわけだ・・・。

呆れた・・・。

その後もいろんなインド人が話しかけてきたもんだから、気付けばFuck以外の英語も喋ってたわ。

そんなもんだな。

結局一番安かったやつが250Rsだった。

・・・あれ?

そういえば・・・

安藤帰ってこないんですけど!!

ぶっちゃけそろそろ怖いんですけど!!泣

心配になって空港の中に潜入。

安藤「終わったよ~!」

向こうから歩いてくる安藤を見つけた時は迷子になった我が子との再会のような嬉しさがこみ上げてきた。

ふぅ・・・

さぁ安藤行くぞ!

俺「でさぁ、250Rsって言ってたけどどうするよ?」

安藤「んじゃそれで行くか!」

と、250Rsと言って来たインド人を捕まえた。

インド人「ここで待ってろ。今車持って来るから」

と言ってどこかへ消えた。

・・・5分経過。

別の奴が話しかけてくる。

いちいち相手すんのがめんどくさい!!

・・・10分経過。

てかあいつこなくね??

俺「ねぇ安藤?あいつ他にいい客見つけたっぽくね?」

安藤「ん~。怪しいね!そういえば地球の歩き方にはプリペイドタクシーが一番安心だって書いてあったからそれにしようか!」

先に言え。

そして俺たちはプリペイドタクシーに乗ることにした。

ニューデリー駅まで250Rsだった。

黒に緑のラインの軽ワゴンが何十台も溜まってて、その中の自分達の車の番号を探しそれに乗った。

運転手はどうやら英語が話せないっぽい。

助手席にもう一人インド人が乗る・・・。(なんでわざわざ二人!?)

隣の安藤先生はもうすでに戦闘モードに切り替わってる・・・。

安藤「清水君!このチケットは最後に渡さないとダメなんだよ!最後だよ!」

俺「あ、ああ・・・なんで?」

安藤「先に渡すと後から余計に請求されたりするんだって!」

俺「そっか、わかったぜ!!」

運転手がなにやら安藤に向かって喋っている。

チケットを貸せと言ってる様だ。

安藤「ダメ!!絶対ダメ!!」

安藤はチケットをまるで生まれたばかりの愛娘を抱くかのように握り締めた。

そのまま車が走り出したと思ったら受付みたいなところで停まった。

運転手がため息混じりに呆れた顔をした。

後部座席の窓を開けチケットにサインしないといけないから受付に渡せって言ってるようだ。

安藤はさっきまで生まれたばかりの愛娘のように大事に持っていたチケットを、今度はまるでグレ始めた中学生の長男のような扱いで受付にチケットを渡した・・・。

受付の人が普通にサインしてチケットは返された・・・。

どんだけインド人を疑ってんだ安藤先生は。

そしてタクシーはインドの町を走り出したのだ。

キュルキュルキュル!!!

「ぎゃぁぁぁぁ~!!停めてぇぇぇぇ~!!」

「ぶつかるって!!あぶねぇって!!」

・・・俺たちはタクシーに乗ったつもりだったのだが間違えてジェットコースターに乗ってしまっていたようである。

とにかく猛スピードで走る。

車線なんかお構いなし。

車ひとつ分開いてればどこでも走りやがる。

ラクションは鳴りっぱなし。

道端にぐちゃぐちゃにつぶれた車が止まっている・・・。

事故だ。

そりゃ事故るわ!!

インドにもたまぁ~に信号がある。

インドでも一応赤信号では止まるらしい。

止まるとどうなるかって?

物乞いが寄って来る。

窓にへばりついて手を出してくる。

指があるのかないのかわからない様な手で窓をこする。

皮膚はただれて固まってる。

言葉が話せないであろうその人はウーウーとうめき声を上げるだけだ。

これがバイオハザードだったらとっくに撃ち殺していただろう。

でもこれは目の前の現実。

彼は一人の人間なんだ。

俺はどうしていいか分からなくなった。

確かにテレビで見たことはあった。

話にも聞いていた。

パチスロのメダル1枚分の20円を差し出せば、きっと彼は喜んでその場を立ち去ってくれるんだろう。

で、シカトした。

正直

怖かったんです(泣)

だんだんと埼玉の秩父地方の様に景色が都会らしくなってきた。

道路の脇には立ちしょんする人、野グソする人、横になって寝てる人、ロバ・・・

ロバ!?

あの日からインドに行こうと決めていたのですが、俺たちは間違えて動物園のふれあい広場に来てしまっていたようだ。

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